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書評: 「 M&A経営論 ビジネスモデル革新の成功法則」の感想・レビュー

学研の社長がM&Aによっていかに経営を立て直したかを書いた本。

学研は私の世代(1985年生まれ)だとギリギリ覚えているくらいの学習誌である「学習」と「科学」を発行していた会社です。2010年まで業績不振で両誌とも休刊。「学習」と「科学」は、学研社の基幹事業なわけなので、当然経営は傾いていきました。その傾いた経営をM&Aによって立て直していった際に得た知見や心構えがまとめてあります。

私も実はキャリアを通じてM&Aの現場に当事者として居合わせることが多かったです。

新卒で入ったニフティ株式会社による株式会社comnico(現ラバブルマーケティンググループ)のM&A、ニフティの社員としてcomnicoに出向していました。

メルカリ在籍時のザワット社、Labit社のM&A。これは、会社のメンバーごと急にオフィスに引っ越してきたのを横目で見みていただけでしたが。

そして今のイタンジ株式会社としてのGA technologies グループへのジョイン。ジョイン後に合流したのですが、PMI期間に両社の間でいろいろな経験をさせていただきました。また、グループとしてその後もM&Aを繰り返しているので、その現場もけっこう横でみることができました。

このあたりの話は需要があればどこかで詳細をまとめて書いてみたいと思います。

この本は精神論寄りであんまり実務的な話じゃないという感想を持ちそうな内容なのですが、上記のような経験をしてきた私がからする首を縦に振りまくりたくなるような内容でした。M&A関連の心構えの書として是非おすすめしたいです。

読書メモ

M&Aの参考にと言っておいてあんまりM&A関連部分を取り上げていないですが。

断罪すべきは敗北ではなく、勝利の中の「逡巡の罪」

このうち「7敗」の損失額はすぐに計算できるが、もっと着目すべきは「8勝」の中身。がんばれば4倍の利益を上げられたのに、2倍の利益しか上げていないとすれば、それを真の勝利とは呼べない。

これは確かに一理あり。うまくいったときに、もっとうまくやれたのでは?と問われることは少ない。勝率がある一定程度を超えないことを考えると勝つときに大きく勝つことが必要であり、そのために投資やリスクテイクにビビってはいけない。

クレーム処理の勝ち方

そのうち、担当者はとうとう本気で怒り出し、私の喉元を摑んでコンクリートの壁に押し付けた。暴力に訴えた時点で、非は先方に移り、この話はそこで終わりとなった。

ここが自分の譲れるラインだと引いたらそこを譲らないこと。根負けして先に動いたほうが負けである。

「5×4×3×2×1」の作戦立案方式

とても良いやり方。往々にして人は自分の作戦がうまくいくと思いすぎる。自分がうまくいくと思うの120通りの作戦が出せればそれはほぼ必ずうまくいく。

M&Aリストを自らつくる

M&Aのリストは持ち込まれるのを待っていてはならず、常に自らリストを作っておくべきである。学研は常に30-40のリストを持っているという。その際に考慮するのはいわゆるシナジーがあるかどうかである。人材交流や、販路の拡大、技術的やノウハウ提供で双方にとってメリットがあるかをしっかり考える。

カマスの実験と汝は画れり

水槽の中央に透明な間仕切りを入れ、一方に肉食魚のカマスを、もう一方にイワシを入れる。カマスはイワシを捕食しようとするが、間仕切りに激突するばかりで食べられない。やがてあきらめたカマスは、間仕切りを取り除いてもイワシを追わなくなる。ついには、そのまま餓死するらしい。

なお、「カマスの実験」の話には続きがある。無気力になったカマスを蘇らせる方法が存在するのである。それは単純な話で、同じ水槽にもう1匹、元気なカマスを投入すればいい。新入りのカマスは喜んでイワシを追いかける。その姿に触発されるように、先輩のカマスも元気を取り戻していくのである。

環境に慣れたりすると、再チャレンジすることなく惰性で生きてしまうのである。『論語』に記された「今汝は画れり(自分で自分に見切りをつけている)」だ。

組織をこのカマスのようにしてはいけないし、もしそうなってしまってもできることはまだあるということを忘れない。自分を見限ってはいけない。

「戦略はストーリー、戦術はキャスティング、戦闘はチームスピリッツ」

例えばアメリカの陸軍士官学校(ウェストポイント)では、「戦略はストーリー、戦術はキャスティング、戦闘はチームスピリッツ」と教えている。

よくありがちなのは、キャスティングから戦略を考えてしまうことである。あくまで戦略は、理詰めでいくつかの成功パス考案し、そのパスを戦術レベルで実行できる人をキャスティングする。例えば営業で勝つならば営業に強い人間を、マーケティングで勝つなら人間をアサインする。ストーリーの中に営業で勝つストーリーがないのに、営業に強い人間をアサインしてはならない。そして、いざ戦いが始まればチームの気合と根性で戦いぬくのみ。