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全経営者に読んでほしい「会社という迷宮――経営者の眠れぬ夜のために」

というわけで、なんのめぐり合わせか2023年11月から長年勤めたイタンジ株式会社の社長をやることになりました。人生何があるかわからないものです。

話をもらったのは2022年11月だったので、ちょうど1年間の引き継ぎ期間がありました。この1年間、社長って何したらわからんということで、実に多くの本を読みましたが、そんな私の「社長は何の役割とはなんなのか?」という悩みに一番直接答えたくれたのがこの本でした。

経営コンサルタントとして数多くの企業、経営者と対話を続けてきた著者が人生の集大成として書いたような本で、本当に多くの学びがありました。社長とまではいかなくても初めて経営というものに足を突っ込むことになったすべての人に読んでほしいです。

メモ

経営者の役割

「経営者」は新しい時代に向けて、もちろん変わらなければならないが、その方向は「競争的世界観」に適合した技術者・技能者になることではない。それだけならば、有能なテクノクラートたちの力を借りれば十分である。 そうではなくて、「経営者」でなければできない仕事、それはひと言で言えば、「会社」のめざす「価値」、夢や志を体現する担い手となることなのである。

「はじめに」にすべてが書いてあったのだが、要は経営者の役割は今風にいうとビジョンを示すということだということです。この視点に立ってみると、常にビジョンが先で会社があとであるはずなのだが、最近の会社はそれが逆になっている。会社を作ってからビジョンをつくることの滑稽さを指摘していた。

人材

「人材」が育っていないという危機感があれば、その反作用で「人材」への投資に気持ちが向かうことになる。しかし本来、設備などの有形資産や知財などの無形資産とは違い、いつでも自由に自分の意思で出ていってしまうかもしれないヒトに対して、そもそも投資などという概念が成り立つはずはない。「人的資産」などという比喩も多用されるが、所有するモノではなく自由意思を持ったヒトをバランスシートに計上することなど、本来ならたとえ脳内の仮想であったとしても、できるはずはあるまい。

 

そもそも「組織」が「組織」であるシンプルな理由は「1+1>2」であるからだとすると、逆に同じことを「人材」側から見れば、「組織」にいることで自分が「1」以上の働きができるからこそ、その「組織」に留まっているのである。

人材不足と言われて久しくて、イタンジでも採用には苦労している。そもそも育成に手を回せてもいなかったのだが、人を活かすというこの考えは新鮮であった。しかし、これはつまりは自社への最適化を図ることであり、会社が潰れればそのまま他社には適合できない可能性をはらむ。自社で一生働いてもらう覚悟、または自社に最適化されつつも他社で通用しうる尖った能力を身に着けてもらうという方向性が必要な考え方である。