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書評:「セゾン 堤清二が見た未来」の感想・レビュー

無印良品、ファミリーマート、パルコ、西武百貨店、西友、ロフト、そして外食チェーンの吉野家ーー。 いずれも日々の生活でなじみのある企業であり、知名度の高いブランドだ。 これらの企業が、かつて同じグループに属していたことを、知らない世代が増えている。

この導入で思わず購入してしまいました。

無印良品やファミリーマートってそういう出自だったのかという驚きと、戦後からバブル期にかえての流通小売業を主軸としたコングロマリット企業の歴史という意味で非常に興味深い内容でした。

会社を成長させようとすると必然的に多角化が必要になってくるが、その多角化の軸をどこに持つべきなのか、どこに持たないべきなのか。セゾングループは「文化の形成」という軸を持っていたがそこにこだわりすぎたことがグループ崩壊を招いたように思う。

創業社長の裸の王様化というのは避けられない事象なのか晩年の判断ミスが目立つ。そう思うと楽天、ソフトバンク、ユニクロなどは同じ道をたどる可能性があり、キーエンスはそのあたりをうまく避けられている。歴史は繰り返すのか、大きな判断ミスを犯す前に後任を見つけることができるのか。晩年を迎えている楽天、ソフトバンク、ユニクロなどの行く末が楽しみである。

読書メモ

わけあり商品とわけありげ商品

単なる廉価版を販売しない。

廉価版をつくるときは、工夫によって原価を下げる、何かをごっそり削ぎ落とす、などしっかりとした廉価の理由を意識することが大事である。

逆に競合他社より高いものを売るときは、消費者の意識的にも、無意識的にもその商品がわけあって高いのだと思ってもらう必要がある。

それまで競合スーパーが手がけていたノーブランド商品には、どうしてもナショナルブランドの廉価版というイメージがつきまとっていた。「安いけれど、価格相応に材料が劣っていたり、製法を手抜きしているんでしょう」といった消費者の疑念だ。つまりは「安かろう悪かろう」という印象が強かったわけだ。

リスクを取らないとクリエイティブな製品は生まれない

なんでもそうだが、身銭をきる、リスクをとるということをしないと良い仕事はできない。

他人にリスクや責任を押し付けた仕事はどこから他人にごとになるからだ。失敗したら痛い目を見るというリスクこそが人をクリエイティブにさせる。

「問屋に任せてリスクを取らないところからは、クリエイティブな仕事は生まれない」

批判をしない、身内でも

その後、土下座して謝罪していて怖かった。

何かがうまくいき始めると自分の力だと思いがちだが、奢らず、過去や歴史に感謝することが大切。

分社後、木内は順調に事業を拡大して実績を上げ、1993年には良品計画の社長に就いた。だが間もなく、木内のメディアでの発言が、セゾングループや堤への批判と取られ、内部で大きな波紋を呼ぶことになった。  セゾングループは商品企画やマーケティングを重視するあまり、地道な改革を怠りがちだ。それを反面教師にしたから、無印良品はうまくいった──。そんな内容の発言だった。

トップのコンセプトと現実の折り合いをつける

トップがコンセプトをつくり、ミドルマネージャーが現実との折り合いをつけてきた一例である。

知識創造企業に書かれているように、トップの役割はグランドデザインの策定であり、ミドルマネージャーはコンセプトと現実の架け橋になるべきである。

だが木内は、本業のビジネスモデルを確立するのが急務と考え、堤の要求をうまくかわしてきたという。「ものがあふれる時代になると、次は時間商品が重要だという堤さんの論理は正しいと思います」と木内は語る。今で言う「コト消費」への対応である。

新しいものを見つけるとは

歴史に学ぶ、過去の事例に学ぶ、他の事例に学ぶことは非常に大切である。

人間は、自分が考えられると思い、自分で考えすぎると感じている。

「何か新しいものを初めて見つけることではなく、古いもの、古くから知られていたもの、あるいは誰の目にもふれていたが見逃されていたものを新しいもののように見出すことが、真に独創的なことである。」 ニーチェ

衣食住のつぎの4要素

ビジネスというのは大体この7要素に分類されている。金融だけが外れている。それゆえ人のニーズの枠を超えて成長できる(してしまう)とも言える。

「衣・食・住」が充足した時代には、「遊・休・知・美」という新たな消費者のニーズをつかまなくてはならない。

リザベーションビジネス

このアイディアは横展開できるかもしれない。

リザベーションを広義で捉えると、今までなかった枠組みを作り出し、買い上げ、そこに値をつけるビジネスである。

値付けは需要できまり、そこからどの程度利益をとれるかは販路の強さで決まると思われる。

「リザベーションという言葉を、堤さんはかなり広い意味で使っていて、旅行のほかに、エンターテインメントのチケットなども含まれると考えていました。『例えば、地方の祭りの出しものを見る桟敷席のチケットをつくって提供するような時代が来るんだ』と言っていました」

防御的買収

防御を忘れない

「丸物を私が買わないと、ダイエーやイトーヨーカ堂が買収して池袋に出てくるかもしれない。そうなると西武百貨店にとって難物だ。無理をしてでも買わなくては」

良いものを買うときのチャネル

当時の日本では、百貨店こそが自他ともに認める小売業の王様だった。ファッションにせよ、インテリア用品にせよ、質の良いものを買おうと思えば、百貨店を真っ先に思い浮かべる消費者が多かった。

現代の日本だとそもそもこういったニーズ自体がなくなってしまったように思う。

ニーズがなくなってしまったのか、それとも何か他のものが代替しているのか。

パルコと百貨店

パルコは自ら商品を仕入れて売るのではなく、テナントからの賃料で利益を得る不動産業だ。百貨店のように品ぞろえで勝負するのではなく、テナント構成と建物全体のイメージで勝負する、空間プロデュース業とも言えるビジネスモデルだった。

百貨店はセレクトショップであり、パルコのようなファッションビルはテナントから賃料を得る不動産業である。

なぜ百貨店は衰退して、パルコのようなファッションビルはまだ生き残っているかというと、ショップ側に商品選定のリスクを転嫁しているからである

パルコは商店街の役割を補完している

集まることでスケールメリットをとる、相互補完するというモデルは参考になる。商店街とファッションビルで同じことをやっているというのが新鮮だった。

ただし、結局はそれらが足し算ではなくて掛け算になっていないと意味ない。そうでなければ結局は長期的にはしぼんでいってしまう。

「パルコは、単なる小売業の集積ではないんだというのが、私がつくった時の考え方です。小売業に新しい風を吹かせました。テナントが集まって相互に啓発する。単独出店では採算が合わない店でも、集まって商圏を広くすれば、そういう店が欲しいという顧客が来ます」 「例えば海外のファッション関連の書籍を集めた個性的な書店でも、パルコに入れば経営が成り立ちます。各地の商店街は今、シャッター通りになり、そういう個性的な店は閉店せざるを得ない状況です。けれどパルコは昔の商店街の役割を補完できます」

不動産系ビジネスの危険性

成長しその後破綻した企業の多くは、BSを大きく痛める事業(主に不動産業など)に手を出し、その後本業が傾いて破綻するという道筋をたどっている。

特に創業社長の会社は顕著であるように思う。

古今東西、金や名誉を得たあとにやりたいことは「メディア」と「場所」であり、メディアは失敗しても火傷程度で住むが、場所のほうは大火事になる。

ファミリーマートと企業文化

ファミリーマートには緩い文化があった。元々の小商店の自由度を残す、チェーンオペレーションを徹底できないなど。

それらがチェーンオペレーションを徹底するセブンイレブンの差となり最後には追いつけないくらいの差がついてしまった。

文化は簡単には変えられない。

ノーアイデアで何とかしようとするのは、みっともない

拝金主義におちいらず、常に顧客に対して新しい価値を提供していくことが大切。

「僕は堤さんのまねをしているようです。身につけた考え方は、『ノーアイデアで何とかするというのは、みっともないんですよ』ということです。社員にも同じことを伝えていますね。今、世の中の軸は『損か得か』ということだけになっています。けれど、僕がやりたいのは、『この企業とつき合って、私は何かが開けた』と感じてもらうことなのです。西武百貨店には、そういう意思がありました」