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「 座右の書『貞観政要』」の感想・レビュー

ライフネット生命の創業者である出口さんが、座右の書としているという「貞観政要」についてまとめた本です。

貞観政要とは、中国史上でもっとも国内が治まった時代と言われている「貞観」(中国の元号)の政要(政治の要点)をまとめた、色褪せないリーダー論の古典本です。

貞観政要の要点をかいつまみながら、出口さんの独自の視点を入れ込んで、ライトに読めるようにした貞観政要のエントリー本という感じでしょうか。

貞観政要の大筋の主張は、

  1. リーダーは調子にのるな
  2. リーダーは部下の諫言(いさめるアドバイス)によく耳を傾けよ

という点に集約されます。

貞観政要の原文はまだ読んだことはないのですが、この2点について手を変え品を変え語られていくという内容になっています。

長く読まれ続ける古典だけあって、主張はシンプルながらもいろいろ考えさせられる内容ですので、管理職の方はサラッとでも目を通しておくことをオススメします。

読書メモ

器を消す

今、自分の器の中(頭の中といい換えてもいいでしょう)に入っている、好き嫌いの感情、仕事観や人生観、ちょっとはいい格好をしたいという見栄、あれが欲しいという欲求、自分は正しいという思い込み、まわりは間違っているという偏見、上から目線などといったものをすべて捨てて、無にしてしまう。

よく組織はリーダーの器以上にならないと言われるが、器を大きくすることなんてそうそうできることではない。

なのでいっそ人によく任せ、自分の器を消してしまったほうがよい。

情報取得自体も取捨選択する

「多くのことを忘れずに記憶していると、心を損ないます。そして、多くを語れば、気を損ないます。内に心と気を損なうと、外に肉体と精神を疲れさせます」

いろんなことを知ってしまうと意識が分散したり、自分にとってショックなことを知れば心にネガティブな影響を与える。

知るべきことはしっかり知るべきだが、知らなくても影響はないが、知ってしまうとネガティブに働く、リアクションを取らざるをえない類の情報は意図的に避けるべきである。

なんでもかんでも首をつっこまない。

伝える時は慎重に

ころころと意見が変わるリーダーは決して部下から信用されません。口に出す前に、集中して深く考える。自分の言葉によって引き起こされる事態を想定して、その準備や覚悟ができているかを自分に問う。一度口にしたことには徹底して責任を持つ。そして、あとから意見を変えない。

方針の発表などはしっかりクローズドに議論して、いっぱつで伝えることが必要。

出してみてやっぱ違いましたを繰り返すとだんだんと信用をなくしていく。

判断における時間軸を意識する

上に立つ人は時間軸を自由に使える権限を持っています。だからこそ、その事象をどのくらいの年次で判断すべきなのかを冷静に考え、正しく時間軸を設定する必要があります。

成功と失敗を判断するには最初に時間軸を意識しておかないとならない。

それをコントロールするのがリーダーの役目である。

例えば、広報やブランディングなど、すぐに目に見える結果が出ない類のものはしっかり考える。1年、3年、5年でこういった状態になっているとビジョンとセット考えること。

短期での施策も同様に1ヶ月で検証することなのか、3ヶ月で検証することなのかを意識し、ある程度それを伝えて指示を出すこと。

清濁あわせのむ

人格は濁っていてはいけない。しかし、輝くほど澄んでいてもいけない

あまりにもすべてに厳格すぎると、人がなじまず辛くなってしまう。

人間には多面性があることを忘れずに一面的に判断してはならない。パーフェクトを求めてはならない。

水清ければ魚棲まず

ぐっすり寝る、ぐっすり寝かせる

「古来、多くの帝王は、自分の感情のままに喜んだり怒ったりしてきた。喜んでいるときは、それほど功績をあげていない人間にまで褒美を与え、怒っているときは罪のない人間まで殺してしまう。世の中の乱れというのは、多くの場合、こうした帝王の行いが原因になっている」 (巻第二 求諫第四 第四章)

人間には感情があるので、どうしても判断に私情が入ったり、間違った判断をするときがある。

これを避けるためには、基本的には寝ることと、寝かせることが重要である。

疲れているときはしっかり寝て判断力を取り戻す、判断に迷うときは早急に判断をくださず寝かせて再度じっくり考えてみることが大事である。

人物を大きくする三要素、「読書」「筆法」「人との交流」

どのビジネス書でも同じことが書かれている。これは意識すべきこと。

部下を信じる

たとえ上司が自分の感情を隠して、どの部下とも平等に接しているつもりだとしても、部下は「上司が自分のことを好きか、嫌いか」を見抜いているものです。

「上の人が下の人を信用しないのは、下には信用できる人がいないと思うからです。下を信用できないのは、上の人に疑いの気持ちがあるからです。礼記(儒家の経書)に『上の人が疑えば人民は迷い、下の人の心がわからないと、君主は苦労する』と書かれてあります。このように、上の者と下の者が互いに疑い合っていると、国を良くすることはできません」 (巻第七 論礼楽第二十九 第九章)

こちらが部下を信じていないというのはなんとなく伝わるものである。

なので、絶対に失敗できないこと以外は思い切って任す(ただし人選はしっかりする)。任せたら気持ちを聞きつつも、細かいことに口出ししないことが大切。

部下の数の限界

どんなに優れた人でも10人の部下を持つのが限界である。

モンゴル帝国もそうしていた。

少数精鋭

少数精鋭というのは、精鋭を少数集めるということではない。集まった少数が精鋭になることである。

野球の守備を7人でやれば自然と守備範囲が広がる、逆に13人でやればそれぞれの能力は上がらないだろう。