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書評: 「 欲望の見つけ方」の感想・レビュー

自分の本当にやりたいことにフォーカスするよう、いろんな本に書いてあります。

では、本当にやりたいことではない、いわば、「かりそめのやりたいこと」はどこからやってくるのか。それは「模倣」つまりは、人の真似をすることでやってくるというのがこの本の主張です。

このパラダイムはけっこう強烈なもので、これを知ってしまうと自分が何かを欲したときに、それが本当に自分の意思なのか、それとも誰かの模倣なのか、常に自分に問うようになってしまいます。

ただ、模倣自体がぜったい的に悪だといっているわけではなく、多かれ少なかれ人間は模倣によってしか欲望を抱けないのでだから、それを意識して模倣の良い力を使っていきましょうというのがこの本のアドバイスです。

ちょっと文章が読みづらいのですが、なかなか面白い本でした。

読書メモ

すべての欲望は模倣である

欲求(needs)と欲望(desire)は違う。欲求(needs)とは、食欲、睡眠欲、性欲のことであり、これらのものに模倣は必要ない。

マズローの理論でいうところの、生理欲求、安全欲求より上の欲求はすべて模倣に支配されている。

この事実をしっかり認識することが重要である。

模倣の問題点

一番の問題点は、模様による欲求を満たそうとすると、自分たちを区別するために争い戦うようなることである。それにより破滅的な出口を見出してしまうことがある。

本書では例としてテロリズムをあげており、911のテロで、なぜテロリストたちが富の象徴である高層ビルにつっこんだのかというと、結局は彼らも同じ富を求めているからに他ならないという主張である。

崇高な野心が模倣により乗っ取られることも問題である。

持続可能性は欲望の対象になることが重要である。自然に良いことだとわかっていても、それが欲望の対象にならないと人々は欲しないのである。

人は模倣していなさそう人に惹かれる

いわゆる破天荒な人というやつ。

ただし、その人にも必ず模倣のモデルはいる。あのスティーブ・ジョブスのふるまいにもモデルとされているロバート・フリードランドという人間がいた。

近くへの模倣と遠くへの模倣

自分と生活圏を同じくしない人々への模倣(有名人、故人など)と、生活圏を同じくする人への模倣(同級生、同僚など)がある。

遠くへの模倣は明示的に行われそんなに問題を引き起こさないが、近くへの模倣は密かに行われ競争を引き起こす。

誰も自分が近くの誰かを真似ているのだとは認めたくないものである。

セレブの国と、1年生の国という例えで書かれいた。1年生の国というのは入学したての生徒たちのふるまいであり、みながみなを模倣しあっている。

弾み車の法則

ビジョナリーカンパニーの中でも語られている「弾み車の法則」がここでも取り上げられている。

この法則にも模倣の欲望のモデルを当てはめて説明されている。つまり、好循環を生み出す要因を加速するモデルをつくれということである。

ザッポスの失墜

ザッポスは、一時、非常にうまくいっていたが、ホロクラシー型の組織形態を取り入れてうまくいかなくなった。

その理由はヒエラルキーを取り払ったことによって、欲望のモデルとなるべき人間がわからなくなったからだと説明されている。

そしてはじめて知ったのだが、元CEOのトニー・シェイは亡くなっていた。

スケープゴートメカニズム

模倣のモデルが定まらずその不安定さが臨界点を迎えたときに、わかりやすいそのはけ口としてスケープゴートがつくられる。

学校や職場でのいじめも同じ原理で説明できる。モデルをしっかり定義してあげることが必要。

酸っぱいブドウの話

キツネがとることのできなかったブドウに対して、あのブドウは酸っぱかなったに違いないという寓話である。

こう言い切れるのは、周りにだれもいないからであり、誰かが見ている場合はそれを言うことは負け惜しみとなる。

しかし、届かない(届こうともしてない)大きな目標に価値がないと判断することは模倣的な欲望に対する対抗策である。

すべてのレストランがミシュランの3つ星を望む必要がないし、3つ星をとったことがないからといってそれが不毛なものだと言えないわけではない。

共感の意味

共感とは、他者の経験を共有する能力である──ただし、相手の話、信念、行動、感情を真似ることはなく、自分自身の人格や冷静さを失うまで共鳴することはない。

共感ができれば、他の人のようにならなくても、他の人と深くつながることができ、それが模倣を回避する方法である。

希望とは

希望とは何かを欲することで、その何かは(1)未来にあり(2)良いもので(3)達成が難しく(4)実現可能なものだ。

あまり語られない希望の定義。

他の人のモデルになる

人は(特にリーダーは)自分が模倣のモデルになりやすいことを意識しなければならない。

間違ったふるまい、インセンティブ設計、行動は周りの人や組織に対して間違った「北」を示すことになる。