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「キーエンス解剖」の感想・レビュー

言わずと知れた日本時価総額3位のキーエンスの強さについて取材した本。実はうちの会社の営業役員もキーエンス出身ということで気になって読みました。

この前読んだ「知識創造企業」の地で行くような会社だと感じました。

特に関心したのは付加価値(キーエンスの原価率は2割程度と言われている)の高い商品の生み出し方と、それとセットになっている営業力の部分でした。ニーズの拾い上げから => 商品の落とし込み、困っているところを察知するなどなど。しかもそれらが徹底的に仕組み化されているかつそれらが文化として根付いているので、競合他社はわかっていてもマネできないだろうなと思いました。

すぐにはマネできないですが、会社の組織運営においてとても参考になる1冊でした。文体もカジュアルで読みやすかった。

読書メモ

シェアに目標はいらない

多くの新規事業の企画はこのように目標設定している。

しかし、今まで関わった自分のサービスで成功したプロダクトは(結果的に)後者のロジックでやっていることが多く非常に納得感があった。

「シェアは結果論なので意味がない」(高杉氏)と考えているためだ。

だから「市場規模が1000億円で、3割のシェアを目指します。年間300億円の売上高になります」という説明はご法度。キーエンスでは「この商品のターゲットとなる顧客を30社ヒアリングしたところ、20%が購入しそうだった。全国では2000社程度がターゲットとなるので、利益はこのぐらいになる」と積み上げ式で説明しなければならない。潜在的な市場を開拓すれば市場規模自体が大きくなるのに、今の市場規模の中で顧客を奪い合う戦略を立てても意味がないという発想だ。

意味的価値

何ができるや、こういったスペックというカタログに載せられる類の価値は機能的価値。なぜそれがいいのか、どのように活かせるのかが意味的価値。

何も考えずに使えるくらいまでの使いやすさの磨き込みが粗利8割という付加価値を生んでいる

「他のメーカーでも技術的にはできるが、こういう組み合わせ方はしないな、という商品を提案してくる」。機能と機能の組み合わせ、機能と使いやすさの組み合わせなどによって、「他社製品よりもはるかに使い勝手がいい」という価値を生み出すのが勝ちパターンの一つとなっているようだ。

ニーズの裏のニーズ

キーエンスでは、顧客の「ニーズの裏のニーズ」を探ることに力をいれている。

例えば電池を製造している企業から切断工程について相談された場合、通常の営業担当者は切断する対象物や切断方法についての知識を仕入れ、その切断工程に適した製品を提案するだろう。ところが、キーエンスの営業担当者の場合は電池の製造工程全体の知識を仕入れていくという。

顧客の言葉を表面的に捉えず、なぜそのニーズが出てきたのか、本当に達成したいことはなんなのかを深く知ることで顧客の信頼を獲得する。

ニーズカード

ヒット生む「ニーズカード」  営業担当者による「取材」の成果を商品開発に生かす仕組みもある。1人が月に1件以上提出するとされる「ニーズカード」だ。  ニーズカードは「世の中にあるものでは、まだこれができない」というニーズを書き込むものだ。

ミドルアップダウンでの商品開発に役立ちそうな方法であるが、ニーズをカード書く側のある程度の技量が必要であるので、実施には注意が必要である。

Web開発において永遠に消化されないバッグログを多く見てきた。

業務の監視

SFAによる行動の可視化、ハッピーコール、内部監査チームの組成など、個人がサボれない仕組みが徹底されている。驚くべきはそれらがあまりネガティブな印象を受けないからである。

その理由は、ほとんどの仕組みにおいて監視を兼ねているが主な目的となっていないからのように思う。

SFAは戦略立案が主目的であり、ハッピーコールは営業における獲得が主目的である。

流通業界では、販売員の顧客に対する販売促進の一環として、顧客との結び付きを強めるために購入商品の利用状況を問い合わせることを「ハッピーコール」と呼ぶ習わしがあるそうだ。キーエンスの「ハッピーコール」は、それとは違う意味を持つ。営業担当者の上司が、顧客に対してフォローの電話をかけることをそう呼んでいる。

「この顧客を○時○分に訪問するためには、この料金所をこの時間に通らなければ間に合いませんよね。ETC(高速道路の自動料金収受システム)の実績が少し違うようですが」。内部監査ではこんな指摘をされると、あるOBは話す。ほかにも「携帯電話の基地局から分かる大まかな位置と、外報で入力した客先の場所が一致しているか」「FAX番号に電話をかけて電話件数を水増ししていないか」など、さまざまな観点からチェックされる。明らかな虚偽があると、処罰の対象になることもある。